「システムを作らない」IT コンサルという答え

「システムを入れれば、業務は変わる」 — そう信じて IT 投資を進めた中小企業の 8 割が失敗 していると言われる。前任ベンダーの破綻、現場の抵抗、ROI 不明という三重苦。
本記事では、HAPILY が掲げる 「システムを作らない IT コンサル」 という逆説的なアプローチが、なぜ中小企業 DX の現実解になるのかを、3 つの典型的な罠と、実際の支援事例を交えて解説する。

はじめに:中小企業 DX の 8 割が失敗する現実

経済産業省「DX レポート」が指摘するように、日本企業の DX 取り組みは多くが頓挫している。中小企業に絞ればその割合はさらに上がる。なぜか。

HAPILY がこの 2 年で関わった中小企業の現場で見えてきたのは、失敗には 3 つの典型的な罠 があるということだった。

罠 1: 「システムを入れれば業務が変わる」という幻想

もっとも多いパターンが、これだ。
経営者が DX という言葉に触発され、ベンダーに「いいシステムを作ってください」と依頼する。半年後、稼働しないシステムと積み上がった請求書だけが残る。

ある製造業の現場では、前任ベンダーとの 2 年半に及ぶ開発が破綻し、納期延長と契約不履行を経て、最終的に「作れません」と告げられた。
原因はベンダーの能力不足だけではない。「何を作ればいいか」を経営側も現場側も言語化できていなかった ことが本質だった。

罠 2: 現場を置き去りにした要件定義

2 つ目は、現場の声を聞かないまま「あるべき業務」を机上で設計してしまうパターン。

外部コンサルが立派な業務フロー図と KPI を作り、経営者が承認し、現場に「明日からこれで」と展開する。
当然、現場は動かない。慣習で回っていた業務には、図には書かれていない 「なぜそうしているのか」 の理由が必ずある。それを潰してから設計しても、現実には合わない。

罠 3: 一度で完成させようとする「ビッグバン」

3 つ目は、大規模システムを一気に作って「リプレース」しようとするアプローチ。
半年〜1 年かけて構築 → リリース → 大規模なトラブル → 現場大混乱、というシナリオが繰り返される。

変化が速い時代に、1 年もかけて作ったものが市場や業務にフィットする保証はない。小さく始めて、すぐに振り返り、必要なら捨てる ことができない設計が、失敗を生む。

HAPILY の答え:「システムを作らない IT コンサル」

これら 3 つの罠を回避するために、HAPILY は 「システムを作らないことから始める」 という逆説的なアプローチを取っている。

誤解しないでほしいのは、これは「IT を使わない」という意味ではない。
むしろ逆で、既に世の中にある 500 以上の SaaS や、AI を含む最新技術を組み合わせて、業務を再設計する。新規開発はその最後の選択肢として位置付ける。

なぜ「作らない」が答えなのか

理由は 3 つある。

  1. 速い: 既存 SaaS を組み合わせれば、数週間で動く環境ができる。1 年待つ必要がない。
  2. 安い: 月額数万円〜数十万円のサブスクリプションで、数千万円規模の開発投資が不要になる。
  3. 変えやすい: 業務に合わなければ、別の SaaS に切り替えられる。一度作ったシステムは捨てるのが難しい。

これは 「自分たちで作る」ことを正解とする企業文化 へのアンチテーゼでもある。本当に必要なのは、自社オリジナルのコードではなく、業務が動き、成果が出ること だ。

現場巻き込み型の 4 ステップ

では、HAPILY は実際にどう関わるか。標準的なステップは 4 つだ。

STEP 1: 現場に 2 日間張り付く

提案書を持って訪問するのではなく、まず現場のオペレーターの隣に 2 日間座る
朝の入荷から夕方の出荷まで、何を、誰が、どんな順番でやっているかを観察する。質問は 3 つだけ:

  • 「なぜこれをやっているんですか?」
  • 「これがなくなったらどう困りますか?」
  • 「もしできるなら、何を変えたいですか?」

2 日目の終わりには、現場が信頼してくれて、提案書には絶対に書かれない 「本当の課題」 が見える。

STEP 2: 「やらないこと」を決める

次にやるのは、業務の引き算。慣習で続いている作業のうち、本当に必要なものはせいぜい 6〜7 割。残りの 3〜4 割は捨てられる。

「Excel に転記している作業」「FAX で送っている書類」「念のため取っている記録」— こうした「今やっている」だけの作業を、まず止める。
システムを入れる前に、業務を軽くする。これが「現場巻き込み型 DX」の出発点だ。

STEP 3: 既存 SaaS を組み合わせる

業務が整理できたら、ようやくツール選定に入る。
EC なら NextEngine / ecforce / Shopify、CRM なら Salesforce / HubSpot、ノーコードなら kintone / Notion、ファイル共有なら Google Workspace。500 以上の選択肢の中から、業務に最も合うものを組み合わせる。

選定基準は 3 つ:

  • 業務にフィットするか: 機能の多さではなく、現場が無理なく使えるか
  • 連携できるか: 単体ではなく、他のツールと API で繋がるか
  • 続けられるか: 月額コスト × 3 年で見て、自社の成長と釣り合うか

STEP 4: 現場が自走できる状態を残す

最後に、HAPILY がいなくても回る 仕組みを作って引き渡す。
これは「外注先」と「もう一つのチーム」の決定的な違いでもある。

具体的には:

  • 現場が自分で SaaS の設定変更できるよう、操作マニュアル + 動画を残す
  • 月次のレビュー会で、現場発の改善提案が出るリズムを作る
  • 「次に困ったら、ここに相談する」社内コミュニケーション経路を明示する

事例:2 年半の迷走を 1 年半で 80 点に

あるペットフード事業の現場でも、上記アプローチを実践した。

前任ベンダーとの 2 年半が破綻し、HAPILY が引き継いだのは「振り出しに戻った」状態。だがそこから 1 年半で、先方評価 80 点(HAPILY 自己評価では辛口で 60 点)の業務基盤を構築できた。

ポイントは 3 つだった:

  • 2 日間の現場張り付き で、前任ベンダーの提案書には載っていなかった「電話注文の比率」「リピート率の本当の数字」が判明
  • 「紙の温かみ」を残す判断: デジタル化できる箇所でも、お客様に読んでほしいカタログは紙のままにした。コアファンが離れない要因に
  • 法的コンプライアンス講習会: 第三者視点で業務基準のギャップを可視化。経営層が「これはやばい」と腹落ちした瞬間がターニングポイント

結果、受注処理工数 −30%、LTV 1.2 倍、CVR +20%。月額伴走は 2 年継続中で、HAPILY 側の関わる職能も PM / マーケ / クリエイティブ / エンジニア / オペレーションの 5 領域に拡張している。

関連記事: 阿古江氏 × 下島 対談「2 年半の迷走を 1 年半で立て直した『現場巻き込み型 DX』の法則」

「あなたの会社」に当てはめる 3 つの問い

最後に、読者の事業に当てはめて考えてみてほしい。次の 3 つに答えられるだろうか。

  1. 現場が、いま朝イチで一番ストレスに感じている作業は何か。 答えられないなら、まず現場に座って聞いてみる価値がある。
  2. 3 年後も続けたい業務は何か。逆に、明日にでも止めたい業務は何か。 引き算ができる経営者だけが、足し算で勝てる。
  3. 「うちはオリジナルが必要」と思い込んでいないか。 業界で 10 社以上が同じ業務をやっているなら、必ず誰かが SaaS を作っている。

次の一歩

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聞くのは あなたの会社の現状と、引っかかっていること だけだ。そこから「うちで関わるべきか」「他社を紹介すべきか」「まずは現場で 1 つ試してみるか」を、対等に整理する。

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